夢というものはまことに不可解で、意味不明なことを告げるものですし、
また人間には、その見た夢の全部が全部かなうとも限りません。
うたかたの夢の通う門は二つあって、
その一つは角(つの)で、もう一つは象牙(ぞうげ)で造られています。
夢のなかでも鋸(のこぎり)で引いて拵(こしら)えた象牙の門をくぐって出てくるものは、
実現しない無益な言葉を運んできて、人を欺(あざむ)きますが、
磨かれた角の門を通って外に出てくる夢は、
それを見た人には正夢となるのです。
ホメロス「夢の門」(『オデュッセイア』より) 北嶋美雪訳
夢の多くは生理状態を反映
夢判断・夢診断は大きく分けて、生理状態、心身の状態、そして暗示性(予知・予見性)のあるものになります。
次に心身の状態(深層心理、心身の調和・不調和など)を反映する夢は、トラウマや生活状況・習慣・環境を背景にするのでさらに判断が分かれます。
この切り分けが簡単にできないので、イメージ検索や夢のストーリーの連想で夢を解釈することが難しいのです。
夢によってはイワシのように簡単にさばけるもの、アジのようにすっきりと片付くもの、また、ヒラメやハギ、時にはアンコウやウナギのように難解なものもあるでしょう。
実はすごく前の話になります。白い蛇の夢を見たんです。
夢の内容は夏の実家の二階の部屋、カラーボックスの本棚の横に、掃除機でつかうブラシが入っていた透明ケースを引っかけているのですが、
その夢が気になってネットで探していたというわけです。
このサイトの説明がいつも頭に焼き付いてたおかげで、体調の異変を感じた途端、自分で救急車を呼びました(人生初です)。
急いで救急車を呼んだおかげで、治療が早く、後遺症もないまま退院できました。
つまり、同じ「白蛇」といったシンボルイメージの意味は、夢を見る人の数ほどあるということです。
出勤の場面、事業所の入口で部長に会いました。私に手を振っています。
夢を見たその日、クリーニングに出そうと思っていたスーツのポケットにずっと入れっぱなしになっていた宝くじを見つけました。
個別にキーワード検索をしても、夢全体の造形を把握しないかぎり、夢の意味の解明・謎解きはできません。
さらに、夢を見る人の身体性(性別や年齢、生まれ育った地域や国、職業や言語を含めた身体的特性、生得的な性格形成)の違いもあり、同じイメージでも性別や職業、生まれた国などで180度夢の意味が異なってくることが多くあります。
つまり、オスのライオンは彼女にとって異性を象徴しているのではなく、長く豊かな髪の毛を蓄えた顧客の女性たちを意味していたのです。
彼女の職業のことを考慮にいれず、ライオンの雌雄のイメージだけで単純にフロイト的なイメージ連想をしてしまうと、この夢の判断を大きく間違えてしまうのです。
このように夢全体の造形や身体性がわかってくると、それが生理的な雑夢なのか、警告夢なのか、心身の不調和をあらわす悪夢なのか、もしかしたら虫が知らせる予知夢なのか、そのおおまかな区別ができるようになります。
まず、夢の造形・構造を読み解くには、夢全体を通しての自身の「行動・行為」と、その「目的」に注目します。
この「取り出す」というイメージが夢の中での行動・行為、「駆除」がその目的になります。
ここで蛇やハツカネズミなどの小動物のイメージが浮かび上がり、そこで初めて「白」がネガティブな意味を持ってきます。
また、早く帰って誰にも知られずに中身を見たいというドキドキ感や衝動は、予知夢にはもっとも多い構成になっています。
よく言われる、「うんち・おしっこ」の夢が金運を暗示するというのは、便や小水のイメージが金色(金運)を連想させるからではなく、浄化を意味する「白の便器」や「流れる」「溢れる」イメージのほうが本当の意味を持つからです。
基本になる白色が意味する浄化が、自分の何を浄化し、それが良い暗示なのか悪い暗示なのか、ひとつのキーワードがすべて吉凶の二面性・解釈の多様性を持っているということになります。
つまり、一夜の夢に現れるひとつひとつのイメージには、世界中で夢を見ている人の数だけ多彩な意味があるのです。
ほとんどの夢は生理的な状態(健康状態、就寝時の生理変化、大脳生理学的な脳の働きなど)を反映します。
そして、暗示性(予知・予見性)のある夢については、夢を見る人の感受性や夢への関心度に依存するのでもっと判断が難しくなります。
印象に残ったイメージや背景イメージだけを調べても、自分の夢の意味やメッセージを読み解くことはできません。
ただ、あまたの夢をリーディングしてきた眠り男自身の経験から、あるプロセスを通して、その切り分けと夢の意味を読み解くきっかけがつかめます。
夢解きを喩えるなら、魚の三枚おろしをイメージするといいでしょう。コツがわかれば、ほどほどのかたちに切り分けができると思います。
では、以前本サイトの掲示板に書きこみのあった夢の実例からご覧ください。
白い蛇
(ある女性の夢の書きこみより)
巷では白蛇は幸運の証とか金運最強とか広告ベタベタのコピペスピリチュアサイトではよく聞く話ですが、どうも腑に落ちず、しばらくネットを徘徊してここのサイトを発見しました。
見つけたのは「白蛇」ではなく「白い小動物や生き物」の項です。
読んで直観的に「知りたいのはこれだ」と確信が持てたんです。不思議です。
その中になぜか何匹がハツカネズミと生きた白蛇が入っていたんです。
ネズミは死んでいるのか動きませんでしたが、白蛇はカマ首を持ち上げ明後日の方向を向いていました。
嫌な印象も怖い印象もないのですが「なぜこんなところに?」と思っている内に目が覚めました。
それから数か月後、心筋梗塞で入院しました。
点滴、酸素吸入、心電図端子、お小水のパイプ、全身管だらけになって入院しましたが、病室の天井を眺めながら、このサイトと夢の白蛇を思い出して「なんか守られた、助けられた」って気分に浸っておりました。
これは白い小動物が生理的な異常の兆候を知らせてくれた夢ですね。
生理的な夢と言えますが、単純な雑夢ではなく、強いメッセージを持った健康に関する警告夢になっています。
繰り返しますが、夢は単純なイメージ連想で判断できるものではありません。
それをどうやって自身の夢の判断や解釈に結び付けられるか、そこが眠り男流の夢解きのこつになります。
次に、ある男性の夢をご紹介します。
白い封筒
(会社員男性の夢より)
私を待っていたようです。部長はよく太っていて、社風に馴染まない派手なストライプのスーツを着ていました。
(ちなみにこの部長は私の知らない人ですが、夢の中では私の所属先の部長ということになっています)
部長は駆け寄ってきて、私の肩をたたきながら、分厚い白い封筒を「ありがとう、ありがとう」と何度も言いながら手渡しました。
封筒の口は開いていて、少しだけ中身が目に入って、ちょうど札束が入っているような感じでした。
部長を見送っていましたが、私はその封筒の中身を誰にも知られず早く確認したい衝動でいっぱいでした。
どきどきしながらその封筒をスーツの内ポケットに入れて、すぐに自宅へ戻ろうとしたところで目が覚めました。
翌日売り場で確認したらなんと、百万円が当たっていました!
この実例も「白」がキーイメージになっています。
判断のポイントは、口が開いた封筒、自宅に戻ろうとするイメージです。
同じ白色のイメージでもこの結果の違いは何かというと、夢全体の造形(夢のイメージ構成・夢の構造)から出ているものです。
以前、たてがみを揺らした雄ライオンがあらわれ、家の外をうろついている夢をひんぱんに見始めたという女性の相談を受けたことがありました。
「ひょっとして出会いの予兆なのかな?」と彼女は最初に語っていましたが、過度のストレスと疲労をあらわしていると伝えたところ、仕事がつらくここ最近疲れ果てて眠るだけの毎日ということでした。
実は彼女の職業は美容師さんだったのです。
人気店の美容師という職業柄、その強いストレスや疲労のピークを、長いたてがみのあるライオンたちの訪問として表現していたということです。
夢の造形の読み方
例えば先の実例の「白蛇」の夢なら、夢の中で自分が何をしようとしているかを探っていきます。
少し深堀りするなら、掃除機のブラシのケースに入っている小動物を駆除、取り出す必要があります。
「取り出す」というイメージは、潜在的なものが顕在化する可能性を示唆します。
駆除しなければならない厄介なものというニュアンスです。
この段階で生理的な要素が強く、健康に関する警告的なメッセージを含んだ夢になっています。
反対に、もうひとつの実例「白い封筒」では、「ありがとう」を連発する相手の行為のイメージ、中身を確認したいという強い衝動と出勤から退勤への展開行為があります。
封筒は口が開いているので、これも取り出す行為をあらわします。
潜在化していたものが顕在化するというニュアンスとともに、派手な人物の意外性のある「ありがとう」は自身の喜びを意味します。
この白い封筒は閉じられていないうえ、簡単に捨ててもよい金銭浄化という意味で、金銭感覚の変化をあらわします。
白色に「浄化」という意味があるのはどちらの夢の実例にも共通しています。
わかりやすく言えば、その白のイメージは、健康状態の浄化をうながすイメージにも、金運の浄化を暗示するイメージにもなっているということです。
白蛇の夢は身体・生理状態の浄化の必要、そして白い封筒の夢は金運浄化の暗示ということになります。
つまり、イメージだけを調べても夢全体の意味がわかるわけではありません。
その多彩なイメージをひとつの造形として紐づけることができれば、自身の夢の意味がわかってくるということです。
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